Francis Planté(フランシス プランテ)

さて、久々のピアニストの投稿は19世紀の名人より。プランテ(1839–1934)は初めてレコードに録音したピアニストとして知られている。7歳から演奏活動を始めたといわれ、生没年からわかるとおり、ショパン(1849年没)やリスト(1886年没)と親交があったとされている。フレデリック・ラモンドやオイゲン・ダルベーアといったリストの高弟は録音を残しているのに対し、ショパンの場合はマティアスやミクリといった弟子ははもちろん録音が残っていないし、直接影響を受けたとされるアントン・ルビンシュタイン(1894年没)やアントワーヌ・マルモンテル(1898年没)といったエジソンの発明(初録音は1877年)に間に合っている人たちも録音を残していない(自分が知らないだけかもしれないが)。そんな中でマルモンテルの弟子の一人であるプランテは幼いころから演奏活動を行っていたこともあり、ショパンの生の演奏にも触れ合っていたとされており、そんな人の録音が残っているということで彼の録音は楽譜からは知りえない「音にしか残せない思い」を感じることのできる貴重なものといわれている。

そんな彼の録音どころか演奏風景。曲はショパンのエチュードOp.10-7。風貌からは想像できないくらい生き生きと演奏している。

エチュードOp.10-4。

エチュードOp.10-5「黒鍵」。

常にテンポを保ち、ヘッドバンキングをしたくなるような拍毎のアクセントをつける演奏法は今の演奏家のものよりもずっとかたく感じられるが、もしかしたら現代の演奏は楽譜からの想像を膨らませた結果であり、ある意味作曲家本人の演奏を聴かないほうが「解釈」という名のスパイスを効かせることができて作品をよりよいものへと昇華させているのかもしれない。

参考にリヒテル。参考にならないぐらいに速すぎるけど。

ベートーベン ソナタ月光3楽章

一つの曲をそれぞれが弾いているのをまとめてみよう、という思いつき企画。ポップスでも別人がカバーすると新しい一面が見えるように、それぞれの解釈で同じ曲が違う印象を見せてくれることがよくわかりますな。

マレイ・ペライア。
ごくごくまじめに、お手本のような演奏。

ヴィルヘルム・ケンプ
テンポはほとんど揺らさず、お堅い、ある意味ベートーベンっぽさ満載の演奏。おじいちゃんの時なのでミスタッチは目立つけれども、彼の音楽に対する姿勢がよくわかる演奏。

ダニエル・バレンボイム
古典派を得意とする彼らしく、彼のこの曲に対する「好きさ加減」が良くわかる。テンポの揺らしも含めて余裕たっぷりな感がある。

ホロヴィッツ
なんとなく、「ベートーベン」ではなく、「演奏者の曲」になりはじめました。弱音と強音の幅が広く、またペダルをあまり踏んでないので音があまり濁らない。また、所々で低音のアクセントを効かせて音の輪郭を際だたせている。

グールド
疾走感は抜群。彼だけまったく別の曲を弾いている感がありますな。彼のレコード出版時にはいつも「雑音が入っている」とクレームがつくのだが、実は彼のうなり声でした、なんて逸話が残っていて、この録音もたぶんに漏れず、ヘッドホンで聴くとうなり声が聞こえます。
彼だけ4分台。

グールドとホロビッツに熱狂的なファンがいる理由がよくわかる比較でした。

リヒテルがとんでもない姿になっていた件

どうもリストの伝記映画のようなのだが、あまりに髪がふさふさで…
ロシアの英雄にこんなことさせちゃだめだって。

普通(?)のリヒテルはこんな感じ。

ハイフェッツなんかの動画を探すと妙に恋愛映画仕立てになっていてロマンスグレイな雰囲気たっぷりのものが結構みつかるんだけれども、さすがにこれはひどすぎ。